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第3回
| 土田与七郎 由利本荘市議会議員 矢島町元町 |
| 鳥海賛歌 | ||
私は農業という職業がら、朝起きてすぐ南の空を見るクセがついている。鳥海山の空に浮かぶ姿、周辺の雲の様子から今日の天気を判断し、仕事の予定や段取りをたてることが多い。 農作業はお天気しだいでその日の作業内容が変わるためである。ましてや私たちのように畜産農家は、草地での乾草生産という作業があり、「晴れ」の日に山に上るお天気行動隊でもある。 この時期はじつにお天気に敏感になるため、テレビの天気予報と南の空が気になってしようがない。週間予報を聞いて「明日は刈り取りに山に上れるな」と思いつつ、次の日の早朝、起きてすぐ南の側の窓から鳥海山を眺め、よい天気が続くことを確認するといった具合である。 でも、お天気の場合西の空を見るのが普通だと思うが、南側の鳥海山の方を見るのが不思議である。 このように、朝な夕な、なにげなしに自然に目にしている鳥海山であるが、私たちの生活に深く関わりをもち、地域の自然環境はもちろんのこと、歴史、文化とも切っても切れない関係であるとともに、住民の心のシンボルとしての存在はあまりにも大きく計り知れないものがある。 私が鳥海山にはじめて登ったのは小学校5年の夏休み、山岳学級であった。先生たちと20名くらいでの登山であり、3合目駒の王子まではバスで、そこから登り、初日は祓川ヒュッテ泊まりであった。 明日頂上に登ると思うとやけに興奮して眠れなかったのを今でも覚えている。 翌朝3時ごろ、懐中電灯を片手にヒュッテを出発。心地よい空気に浸りながら、岩につまづき、雪渓に足を滑らせながら黙々と登ったのだが、苦しい辛いとは思わなかった。そして御来光を拝み、影鳥海を知り、チョウカイフスマを教えてもらった。 いつも見ているあの山の頂上に登ったというなんとも言えない充実感、新山の頂上でみんなそろってバンザイをしたのが忘れられない。 山の魅力はひとくちでは語ることはできない。景色はもちろんであるが、、山小屋の雰囲気、テント生活やキャンプファイヤー、高山植物やお花畑、登る人、下る人のお互いに掛け合う「こんにちは」「ごくろうさん」のことばが心に沁みる。 それにも増して山に集う飾り気のない素朴な人々がとてもたまらないのである。そんなことから初登山以来、山にはまっていた。このごろはその機会に恵まれないが、いつも鳥海山を見るたびそのときのことを思い出しては懐かしんでいる。 去年9月、皇太子殿下が鳥海山に矢島登山口から登られ、「変化に富んだ、いい山ですね」と感想を述べられたそうで、地域の誇れる鳥海山をお誉めいただいたことをとてもうれしく思う。願わくば、このすばらしい山を全国のみなさんにも知ってもらい訪れてほしいと思っている。 鳥海山の大自然の恩恵によって生きてきた山麓の私たちは、これからも山と上手につき合っていきたいと思う。鳥海山に感謝しながら。 これからも私の一日は鳥海山を見ることから始まる。 *ご意見やご感想をおまちします。 |