矢島町に「ふるさと納税」できるか
与党税制調査会 平成20年度税制改正
平成19年12月2日
| 太田良行 NPO法人矢島フォーラム理事長 |
| 与党税制調査会は先ごろ、08年度税制改正に向けた初の協議会を開き、個人住民税(地方税)の一部を居住地以外の自治体に納める「ふるさと納税」を創設することで一致したといいます。 納税者が居住地以外の自治体に納税する場合、寄付したものとみなし、居住地に納税する住民税を軽減する。08年度に実現する可能性が高まったと新聞は報じています。 ふるさと納税をめぐっては、総務省が設置した有識者の研究会(ふるさと納税研究会)がこの10月、居住地以外の自治体に納税した場合には、本来納税する住民税の1割を上限に控除するものとし、また寄付先は都道府県でも市区町村でも納税者が選べるものとしました。 そこで、新聞記事をもとに、総務省の設置した「ふるさと納税研究会」の資料などをつき合わせて、じっさいふるさと納税はどのように行われることになるのかシミュレートしてみました。 わたし653は東京に住んでいます。税制改正が行われて、平成20年度から「ふるさと納税」ができるようになりましたので、これを利用して矢島町に少しですが貢献しようと考えました。 「矢島町」には納税できない ところが、「ふるさと納税」は県もしくは市町村にすることになっていることから、矢島町に納税することはできません。由利本荘市か秋田県に納税することになります。 税額は住民税の1割、5000円以上 653の平成20年度の住民税は10万円だったとします。この額の1割を「ふるさと納税」することができます。つまり1万円を「ふるさと」に納税できるわけです。いっぽう住民税が5万円に満たない場合、その1割は5000円に満たないことになりますので、この場合は「ふるさと納税」はできません。 納税額に5000円の限度を設けたのは、金額に比して役所の煩雑さが大きいと考えられたからです。 「ふるさと納税」は「寄付」のかたちで 納税とはいいながら形式は寄付のかたちをとります。上述の例でいえば、653は由利本荘市か秋田県に1万円寄付します。その上で寄付した分を自分の税額から控除してもらいます。 以上をまとめると、予想される「ふるさと納税」は、住民税額5万円を超える人が、その1割を任意の県もしくは市町村(いわゆる「ふるさと」)に寄付し、その分を自分の税額から控除してもらう方式のことです。 ここで控除の方式を例をあげて確認しておくと。 収入から必要経費を除いたものを所得といいます。たとえば、1000万円の収入を得るのに700万円かかったとすると、所得額は300万円です。所得税や住民税などはこの所得金額をベースに決められますが、通常所得には年金保険、健康保険などさまざまな控除が認められています。これを所得控除といい、この例では100万円の所得控除が認められたとします。 すると、残った200万円が課税対象金額です。従来寄付金の控除は上例の所得控除方式でした。1万円を「ふるさと」に寄付すると、その金額を所得控除に加えることができますので、課税対称額はさらに1万円減って199万円。(注1) 課税率が10%だとすると、税額は19万9千円になります。もし寄付控除がなかったとすれば税額は20万円。その差額は1千円です。つまり、従来の控除方式で処理すれば1万円「ふるさと納税」したのに、じっさいは1万9千円を「ふるさと」と居住地へ納税したことになります。 これでは、「ふるさと納税」者をだましていることにもなりかねないので、「ふるさと納税」の寄付控除は所得控除ではなく、税額控除になる模様。 こちらの方式では、「ふるさと納税」額1万円を所得から控除するのではなく、割り出した課税額から控除します。上例でいうと、200万円の所得課税額20万円を割り出し、これから1万円を控除するというもの。これなら1万円の寄付に対して1万円の減税が正しく行われることになります。 ご承知のように、「ふるさと納税」は秋田県湯沢市出身の菅元総務相が発案したものです。 「安倍内閣の基本方針は『地方の活力なくして国の活力なし』だ。しかし東京に人と金が一極集中する一方、地方は元気がない。私は地方の活性化やふるさと意識というのは、人とお金の流れを変えることで促されるものと思っている。」といって、「現住所のある自治体に納めている住民税の1割程度を、住民が希望すれば生まれ故郷などに振り向けることができる」ようにするというものでした。 菅氏の当初の考えと今回の与党案は、納税方式から寄付方式に変わっている点で、名称こそ「ふるさと納税」と変わりませんが、その内容はかなりちがったものになっています。 「ふるさと納税」が提案されたとき、地方自治体の首長には賛成論反対論が渦巻きました。 都会と地方の格差是正からこれに賛成した県知事さんたちがいる一方で、住民税の趣旨に反すると非を唱える県知事さんたちもいました。石原東京都知事や東国原宮崎県知事がテレビを賑わしていましたね。 「ふるさと納税」寄付方式はこの対立関係をうまく解消するものです。「寄付」なら「納税」とはちがうので、反対派がいうように住民の会費の性質をもつ住民税を免れることにはなりません。反面「寄付」という迂回的手段をとりながら、実質的には都会から地方へ住民税の一部を振り向けている点で賛成派にも受け入れられるものになっています。 やや不安なのは、じっさいに「ふるさと納税」をする人の立場でしょうか。 「ふるさと」に寄付するといいますが、具体的にはどういうことになるのでしょう。由利本荘市の銀行口座に振り込むということになるのでしょうか。 そうだとして、振込み証明書を確定申告のさい税務署に提出することになるのでしょうか。確定申告している人はまだしも、サラリーマンなど源泉徴収で納税している人の場合はどうするんでしょう。 面倒が先に立つようであれば、「ふるさと納税」の意欲がしぼんでしまわないとも限りません。 与党税制調査会でゴーサインの出た「ふるさと納税寄付方式」ですが、実施までには乗り越えなければならない関門がまだまだありそうです。 注1: 寄付ならなんでも控除されるわけではない。地方自治体の場合でも、所得控除が認められるのは居住していない地方自治体へ寄付した場合だけ。矢島町に住んでいる人が由利本荘市にお世話になりましたと100万円寄付しても、それは「消費」しただけ。100万円分の所得控除は受けられません。 参考: <ふるさと納税>創設で与党一致 「寄付金控除」方式で 11月29日 毎日新聞 自民党税制調査会(津島雄二会長)と公明党税制調査会(井上義久会長)は28日、08年度税制改正に向けた初の与党税制協議会を開き、個人住民税(地方税)の一部を居住地以外の自治体に納める「ふるさと納税」を創設することで一致した。08年度の与党税制改正大綱に盛り込む。納税者が居住地以外の自治体に納税する場合、寄付したものとみなし、居住地に納税する住民税を軽減する。民主党税調もふるさと納税には反対しない見通しで、08年度に実現する可能性が高まった。 この日の会合で、津島会長はふるさと納税について「寄付税制として税額控除で考えていきたい」などと述べ、前向きに取り組む姿勢を示し、井上会長も同意した。与党税調は今後、納税額をどこまで認めるかなどについて詳細を詰める。 ふるさと納税をめぐっては、総務省が設置した有識者の研究会が10月、居住地以外の自治体に納税した場合には、本来納税する住民税の1割を上限に控除するよう求めた。寄付先は都道府県でも市区町村でも納税者が選べるとしている。 ふるさと納税研究会→資料、議事要旨、報告書 ご意見、ご感想をおまちしています。 |